『From beyond the sky』からいただきました

 あおもり番外編〜まだ何にもUPされてないのにいきなり番外編だし結構長い話になっちゃったしあんまり夏っぽくないよスペシャル〜

出演

神名愛姫(かんなえひめ) 氷室雷弥(ひむろ らいや) 神名優一(かんなゆういち) 鉄社雷(くろがねしゃらい) 泗水楓(しすいかえで)

嵩嶺森(たかみねしん) 日向椿(ひゅうがつばき) 虎杖秋鹿(いたどりあいか) 蜩上(ひぐらしかむら) リリア・イーストウッド

 

 

「第二回あおもり総勢肝試し大会ぃ〜!」

ぴーぴー。ぱふぱふー。

「・・・・二回目ってことは、一回目があったのか?」

 雷弥がホイッスルを道にぺっと吐き出しながら言う。

 「おっ、勘がイイねェらいやクン!前回が行われたのは今からけっこうちょっと前でね、

強力な参加者が集まったせいで台無しになって、皆大怪我だったんだって★(ばちーん」

 「ソレ、笑っていい話?」

 愛姫がクラクションを優一に投げつけながら言う。

「大丈夫大丈夫!今回の参加者は皆子供だろ?まさか大バトルを起こしたりしないって!お化け役の人にも迷惑かけないだろ?」

あはは、となんでもないように優一が笑った。しかし愛姫の視線はある人物に移動する。

 「イヤ、あそこに本物の幽霊も震えそうな人がいるんですが・・・・」

「何見てる」

きたァ―!おぃ!鉄社雷!あいつ絶対肝試しなんか怖くないだろ!てゆーかアレだ。何でいるんだ?優一以外の全員が思ったことだった。

 「なぜここにいるのかという目をしているな・・・・なぜか教えてやろう」

 

「あおもりのメンバーだからだ」

 

じゃなかったらいないよね。

 

「さて」

優一が全員の顔をつーっと見回し、うなずきながら言った。

「始めるぞ。では、ペアを決めるためにくじ引きだ。男女問わず二人一組。ああ、もちろん私もはいるからね」

 ということで全員がくじを引いた。割り箸を一本ずつとって、同じ番号の人と組むってヤツだ。

 

 

結果

 

えひめ&らいや あいか&しゃらい かえで&しん かむら&つばき リリア&ゆういち★

 

 

 

「ちょっとーなんで私がおじ様と同じなんですの・・・・」

リリアが不服そうに言う。優一はそれとなく嬉しそうな顔をしているが、彼以外の人間は皆リリアに同情の目を送っている。

「そうやぁー!しかもなんやねん最後の★は!アンタあれか?自分大好き人間か!」

森が優一に食いつく。優一は落ち着いているが、その言い訳は頼りないものだった。

「ああいかん。愛姫の前のところに★をつけるのを忘れていたんだ」

「うるさい!リリアちゃんが可哀想やぁ!」

 

 

「それでは月ノ絵巻の伝説にあるテルマの森に二人ずつはいってもらうぞ。ルートは適当だが、ここに戻ってくればOKだ。道?

道は自分で切り開くものだから地図は要らないさ。ま、特別な力を持った君達なら大丈夫。私はここで待っているから。何かあったらすぐかけつけるからね」

ここまで長いセリフを誰にも邪魔されずに話せたことに優一はちょっとビックリしたようだ。

戸惑いながらも自信満々の顔で全員を見渡した。

 「頼もしいですね。ただ、あの涙を止めてくださればね」

楓がつぶやく。彼女の視線の先にはあざが少し増えたような優一の姿があった。森におしおきされたのだ。

 「さ・・・・さて!じゃあ社雷&秋鹿の男組から行って来い!」

 肝試しがはじまった。       

 

しゃらい&あいか

 

「・・・・・・・・・」

この二人はずっと黙ったままだ。

 「うふうふうふうふふ」

 ばしっ。幽霊がでてきても社雷がふっとばしてしまうため秋鹿は別になんともない。最早会話は必要ないようだ。

地味な二人組みになったのがいけなかったか。

 

しん&かえで

「なぁなぁ楓サン」

「何ですか?」

・・・・アンタ、何で敬語なんや?」

楓が首をかしげながら言う。

「いえ・・・・性格なので」

今度は森が首をかしげる番だ。

「誰にでも?友達にもか?」

「友達と呼べるような友達がいないので・・・・・・」

急に楓の声が低くなったので、森はあえてふーんというような顔をした。

 そのまま二人は黙ってしまった。

 

深夜のテルマの森。この森は、いままでの参加者の墓場になっているというが墓なんて見当たらないし、肝試しなのに肝心の幽霊がでてこない。

二人がルートからはずれてしまったのだろうかと思っていたときだ。

 

がさがさっ。

「いひひひひひひっ!」

「なっ!?」

 現れたのは白い着物を着た定番の女の幽霊だ。しかし何かがおかしい。

「うきききききききっ!いひひ!キモダメシィー」

「酒に酔っているようですね」

 確かにその幽霊は酔っていたようで、少し離れた楓たちの位置からでも酒臭さが分かる。相当飲んでたようだ。

 「あひっ!ゆーれいにも、酒、は、のめんだぁーよ」

 「・・・・・はぁ?楓サン、ひねりつぶしてもエエ?」

「あひゃひゃ。ゆーいちさまァー」

 森は最後の名前にピンときたようだ。

 「ゆーいちさま?アンタ、あの美人好きオヤジのヒモなンか?」

「ひも?いひひひひ。ひもぉー」

「・・・・・・・・・」

 森はなかなか通らない会話にイライラしているようだ。急にポケットに手を突っ込んで、銀色のトランプカードケースくらいの箱をとりだす。

「我慢ならんわ!時間の無駄やし。酒癖悪いヤツぁ、嫌いなんやウチは!ウッド!」

 ビュンッ!まわりの木の枝がいっせいに幽霊の方に向かい、突き刺そうと迫っていく。そして幽霊の体を突き・・・・・・

「あれ?」

 そのまま通り抜けてしまった。どうやら実体はないらしい。今度は楓が銀色の箱をとりだす。

「ウィンドトリック」

楓がその言葉を唱えた瞬間、まわりにものすごい風が吹きだした。そしてその風はだんだんと輪郭が白く中が半透明のかたまりに変化し、幽霊を包み込んだ。

楓はその右手に持ったままのマジックカードを高くかかげ、ぐっと力を込めて握る。

「ぐっ・・・・・・あぅああああ!いひひひひひひひ!」

「・・・・・・・・・・」

森は死に際まで奇声をあげるのかと、珍しそうな顔で風のかたまりのなかの幽霊を見ている。やがて、幽霊は虚空に消えていった。

「な・・・・実体はないから、物理攻撃は効かないんとちゃうんか?」

楓は冷静にマジックカードをかばんにしまいながらこたえる。

「貴女の技はただの基礎的物理攻撃で、わたしが使ったのは魔力を使った攻撃でした。魔力を使えば実体がない幽霊にもききます」

森は思い出したようにうなずいている。ただたんに属性を叫ぶだけの攻撃は物理攻撃でしかないが、魔力を使えば攻撃できるのは当然だ。

「にしても、あのオッサン、影の属性も使えたんやなぁ」

「正確には光と影、ですよ」

 

かむら&つばき

 

 虎杖くんとペアになれなかったな。

「どしたんや上?」

椿の言葉で我にかえった上は、もう少しで木に衝突するところだった。椿に抑えてもらったが。

「あ、ごめんなさい椿さん」

上は謝りながら、秋鹿のことを考えていた。

「うちのことは気にせんといて。ところでココ暗いなぁ・・・・雷ふらせるわけにもいかんし。上、頼むわ」

椿の属性は雷だ。こんなところで使ったら、森中が大火事になってしまうだろう。上は光なので安心だ。

「え、あ。はい」

そういうと上はポケットからマジックカードを取り出した。暗闇のなかのわずかな光が銀の箱に反射する。

「ライト!」

パァーッ!あたりが明るくなり、二人は歩きやすくなった。とそのとき、二人から少しはなれて光の届かない場所のしげみが動いた。

「ゥゥゥウウウ・・・・・」

奇妙なうなり声をあげてでてきたのは、割れ目のような目と口を持つ木だった。しかも動いている。

「・・・・・気味悪いわ。優一さんの仕業かね?」

椿はポシェットからマジックカードを取り出した。

「とりあえず、邪魔や。自我をもつ木なんざ、ちっとも怖くなんかあらへん」

椿はマジックカードを木に投げつけ、つぶやく。

「サンダー」

バチッ、バリーン。木に一瞬電気が走り、木は粉々に砕け散ってしまった。投げつけられたマジックカードはブーメランのように椿の手元に戻ってきた。

「いいなぁ椿さんは。私は光だから、攻撃にあまり使えないもの」

「そんなこと・・・・さっきだって役にたったやんか。今も浮かんでるし。それに光を扱えるものは影も扱えるんやろ?」

上は苦笑した。

 

光と影。光が存在するからこそ影は存在し、逆もまたしかり。影の属性はものに自我を与えたり、色々な影を支配したり。

闇の属性の次に邪悪な属性といえる。しかし心の中が闇ばかりでは扱えない。光があるからこそ、なのだ。闇は、闇だけが存在するのだが。

「光と影。この二つの区別がつかなくなったとき、人間は滅ぶんやろなぁ」

 

えひめ&らいや

「きゃー!」「ぎぃやー!」「うぎゃああああ!」

愛姫は最初から叫びっぱなしだった。愛姫たちは、一番幽霊の多いルートに来てしまったようだった。

「おい神名、うるせえぞ!」

雷弥は耳を手のひらで押さえている。

雷弥のシャツを掴んで離さない愛姫は、彼の背中をバシバシ叩いて、

「あ、あんた。ゆーれい、何とかして」

と泣きながら訴えている。

すると雷弥はマジックカードを上に放り投げてつぶやく。

「サンダー」

ピカッ!と電気が走り、周りにいた幽霊達は消えてしまった。

「ひっ。ひくっ。ううう。ばか、ゆーれい、やー」

愛姫は泣きながらしゃっくりまでして苦しそうな顔をしている。しかし基礎的物理攻撃がきいたので幽霊ではなかった。

「にしても、今回は人間じゃなくって、ゴーストを使ってんだな。影か?」

「た、多分父さんだよ。ひっく」

と、そのとき、愛姫の近くのしげみから幽霊が飛び出してきた。

「ひぃやあー!ひくっ」

愛姫はその場にへたれこんでしまった。すると雷弥側の林からも同じようなものがとびでてきた。その二体は、椿と上の前にも現れた、自我をもった木だ。

雷弥は魔力のある攻撃で抵抗しているが愛姫はその枝に捕らえられてしまった。

「神名!」

「はなして!はなせ!はなせこの野郎!」

愛姫はあらんかぎりの悪態をつきながらマジックカードを取り出す。

「ファイ・・・・・」

ファイアアタックを使おうとしたそのとき。

「待て!」

「それを使ったら、お前も燃えちまうだろう!」

それを聞いた愛姫はやっと気付き、さらにパニックになってしまった。するとそこへ、鈴のように澄んだ声が響きわたった。

「ウィンドカッター!」

スパッスパッ!愛姫を捕らえていた枝が切り落とされ、彼女は雷弥の上に落ちた。声の主は・・・楓だ。

「アースアタック!」

続いておっさんのような声。木の根元に土がドサドサっと落ち、木の根を埋めてしまった。雷弥が顔をあげると、そこには社雷がいた。

「木は地面に埋まっておれ。それがお似合いだ」

「ウッドアタック!」

バリバリッ!どこからともなく太い枝が現れ、土に埋まって動けなくなっている木に絡みついた。木はバキバキと音をたて、森が放った枝に

今にも押しつぶされそうだ。

「どうや、同じ木に捻りつぶされる気分は?」

そして黒いかたまりが木を包んだ。

「虎杖くん!」

上の声だ。秋鹿が黒いかたまりを放ったのだ。

「まって!とどめは私が!ファイアアタックァァアアア!!!」

ドガーン!ものすごい轟音と木の焼ける匂いがあたりを包んだ。愛姫の渾身の一撃だ。

様子を見ていた上がこちらに走ってくる。そしてその後ろから椿が来る。

「はあーっ、はあーっ。もう終わったんか」

 

無事解決。スタート地点に戻らないでメンバーは帰っていった。(後で聞いたところによると、つまらなかったんだそうだ

 

 

 

リリア

「やはり優一どのをつれてくるんでしたわ・・・・ここはどこですの?」

 

 

取り残されたリリア・イーストウッド♪

 

 

 

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慶美様のリクエストにより、あおもり番外編です。

「夏」というお題をいただいたのに、肝試しってだけで他なにも夏じゃないし、

バトルとかあまり迫力ないし、番外編なのに長い。

しかもキャラとか世界観とか説明してないのに書いてしまった。

気に入らなかったので、あとでもう一度チャレンジします!

 

 2300hit踏んだ際のキリリクです。
 自分が考えたキャラクターが面白い感じに動いてくれているので楽しく読まさせていただきました。
 素敵な小説、有難う御座います!!

 ――『おっさんのような声と言う所を見て咄嗟に素で落ち込んでいる社雷の顔が思いつきました。
  折角なのでお礼にこんなものでもどうぞ!